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薬草喩品第五 その3
投稿者:shamon 投稿日:2009年 3月26日(木)08時40分8秒この人々は、この教えを聞くことを得て、現世には心安穏となり、後には善き所に生まれ、仏道を歩む楽しみを受けるであろう。
(要文)
是の諸の衆生、是の法を聞き已つて、現世安穏にして後に善処に生じ、道を以て楽を受く。
(要義)
元来仏教は、無病息災・招福等の利益を与えるためのものでも、死後の世界を保証して安心を得させるものでもありません。同じ仏教と言っても、現世の利益のみに偏するもの、或いは来世の境界のみを願うようなものがありますが、「今世・後世、実の如く之を知る」と言われているように、釈尊の化導は、人々の現在の生活や精神のみならず、それに引き続く未来をも合わせて救うものであるのです。ただ魂の行く先だけを保証して、現在の生活の上に何等の救いも与えないような宗教では、人生に生きる悦びと希望を見出すことは出来ませんし、ただ現在の生活だけを取りあえず救うのであっては、無限の生命に基づいて、その生命の前途に保証を与えんとする宗教の第一義を失ってしまうからです。したがって、釈尊が仮に未来の事を説く場合にも、直ぐその裏には生命の無限性から導いて現在の生活を必ず善導するのであり、現在の事だけを説いているようであっても、必ず直ぐ根底に入って生命の無限性を忘れてはならぬことが説かれます。
釈尊の説かれた一切経は総てが現在未来に亘っての教化であるからこそ、法華経では特にこの点に注意を与えて、この法を聞き終った者は、けっして現世のみ安穏を得るのではない、後には善処に生まれる、善処といってもただ贅沢が出来るというような劣等な快楽でなくして、道を以て楽しみを受ける、崇高なる精神生活を楽しんで心の安らかさと豊かさを得られることが説かれます。日蓮聖人が立正安国論に「先ず生前を安んじて、更に没後を扶(たす)けん」と述べられた如く、仏教は決して厭世悲観となって未来に希望を託す教えではありません。「現世安穏にして後に善処に生じ」と、現在の苦悩や問題を悉く解決するために釈尊の教えは説かれ、そしてより良い未来の境涯を得るために釈尊の教えは説かれているのです。